お願いだから帰ってください

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『一緒に旅行に行く約束だったんだけど、熱出してダウンしちゃって。なっちゃん一人暮らしだし、お見舞いに行きたいんだけど、私が旅行キャンセルしちゃうとなっちゃんすごく気にするから』 「うん」 『だから、久坂君に行ってもらえないかと思うんだけど、どう? 予定ある?』 「へ?」  思わずおかしな声を上げてしまう。 「どうして、ぼくが?」 『えー? だって久坂君、なっちゃんと付き合ってたんでしょ?』 「……なんでそのこと知ってるの」 『なっちゃんから聞いた。ていうか、久坂君見てたらバレバレだよ。好きな人がいるって言ってたけど、それなっちゃんのことでしょ? 名前伏せてくれなくていいって』  孝史郎はスマートフォンを持ったまま文字通り凍り付いた。女性というのは、何故かくも恐ろしい生き物なのだろう。優奈になつめの話をしたことは、ほとんどないのだが。 「内海さん」 『何よぉ』 「なんか、怒ってる?」 『あったりまえでしょ? 久坂君がぐずぐずしてて今フリーだから、私でもいけるのかなって思ってアタックしてたのに。久坂君はなっちゃんのことしか考えてないんだもん。それならそうと早く言ってよ! 望みの無い恋に時間使ってられるほど、私暇じゃないんだから』 「……ごめん」  自分でも何故謝っているのか、よくわからない。
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