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『なっちゃんはその気ないって言ってたけど、押せば落ちるって。押し倒すくらいのことしたら?』
「……それは、だめだよ……」
『まあ、今のなっちゃんに何かしたら、久坂君はケダモノですって大学中に言いふらして、二度と大学に来れないようにしてあげるけど!』
下手なホラー映画よりよほど恐ろしい死刑宣告に、孝史郎は苦笑いをすることしかできなかった。
そんなこんなで、今に至る。
目の前にはぐったりとベッドに横たわるなつめの姿がある。
優奈と話をしていたときは戸惑いの方が大きかったが、電話を切って冷静になると、なつめのことが心配で居ても立っても居られなくなった。少しでも彼女の支えになりたい。どう考えても、付き合ってもいないし疎ましいばかりの自分が赴くのは邪魔でしかないだろうに、それでも行動せずにはいられなかった。
ああ、しかし、この状況はまずい。長年の想い人の自宅で、この無防備な姿はだめだ。抜けるように白い肌と艶やかな黒髪が目に入って、思わず首を振った。頭がどうにかなってしまいそうだった。
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