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白がゆのレトルトは、程よい塩加減でなかなかに美味だった。具合が悪い今でなければ、もっとおいしいと感じるかもしれない。今度また自分で買ってみよう。毎日自分で食事を作るのも大変だと思っていたところだ。
なつめが食べ終わったころ、孝史郎が目を覚ました。
「あ、食べれた?」
「うん。ありがとう。料理する気力なかったから、助かった」
なつめがお礼を言うと、孝史郎は嬉しそうに笑った。そして、自分にかけられたブランケットに気付く。
「これ……ごめん。お見舞いに来たつもりだったのに、世話させちゃった」
「それくらい世話でもなんでもないわよ。それより、お粥とスポドリのレシート頂戴。お金払うから」
「いらないよ。ぼくが勝手に買って来ただけだし」
「そうもいかないでしょ。ほら早く」
なつめはレシートを出せという意味で右手を出していたのだが、孝史郎につかまれてしまう。
「ちょっと、何してんの」
「それはこっちの台詞」
孝史郎はそのままなつめを抱きしめたかと思うと、軽々と持ちあげてベッドに寝かせる。手を、離してくれない。つまり、押し倒されたような体勢になってしまっている。
「ぼくじゃ、だめなんでしょ」
「急に何」
「もう関係ないんだよね? それなのに、どうして優しくしてくれるの?」
「優しいとかじゃなくて、お金のことだからちゃんとしなきゃだめでしょ。相手があんたじゃなくても」
「ぼくじゃなくても、家に入れた?」
孝史郎の顔は悲痛にゆがんでいる。
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