お願いだから帰ってください

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***  白がゆのレトルトは、程よい塩加減でなかなかに美味だった。具合が悪い今でなければ、もっとおいしいと感じるかもしれない。今度また自分で買ってみよう。毎日自分で食事を作るのも大変だと思っていたところだ。  なつめが食べ終わったころ、孝史郎が目を覚ました。 「あ、食べれた?」 「うん。ありがとう。料理する気力なかったから、助かった」  なつめがお礼を言うと、孝史郎は嬉しそうに笑った。そして、自分にかけられたブランケットに気付く。 「これ……ごめん。お見舞いに来たつもりだったのに、世話させちゃった」 「それくらい世話でもなんでもないわよ。それより、お粥とスポドリのレシート頂戴。お金払うから」 「いらないよ。ぼくが勝手に買って来ただけだし」 「そうもいかないでしょ。ほら早く」  なつめはレシートを出せという意味で右手を出していたのだが、孝史郎につかまれてしまう。 「ちょっと、何してんの」 「それはこっちの台詞」  孝史郎はそのままなつめを抱きしめたかと思うと、軽々と持ちあげてベッドに寝かせる。手を、離してくれない。つまり、押し倒されたような体勢になってしまっている。 「ぼくじゃ、だめなんでしょ」 「急に何」 「もう関係ないんだよね? それなのに、どうして優しくしてくれるの?」 「優しいとかじゃなくて、お金のことだからちゃんとしなきゃだめでしょ。相手があんたじゃなくても」 「ぼくじゃなくても、家に入れた?」  孝史郎の顔は悲痛にゆがんでいる。
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