この世で一番、会いたくなかった人

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***  なつめはしばらく歩いてから、勢いよく振り返った。思った通り、孝史郎は自分の後をついてきていた。なつめが急に立ち止まったので、飛び上がって驚いている。 「あなたと話したくなくて席を立ったんだけど。わからなかった?」  あからさまな拒絶の言葉に、孝史郎は大きな体を縮めた。 「うん……あの、なつめさんがぼくのことを怒っているのは、わかっているつもりで」 「その呼び方もやめて!」  周りに誰もいないのをいいことに、なつめは声を張り上げた。呼び方にしろ視線の使い方にしろ、あの頃と全く同じように振る舞う孝史郎が許せなかった。そんな、愛おしいものを見るような目をしないでほしい。そうじゃないのだとしたら、そんな誤解をさせないでほしい。 「ちっともわかってないじゃない。私が怒っているって思うなら、どうしてついてくるのよ」 「せめて友達になれないかと思ったんだけど……やっぱりだめ?」 「友達ですって?」  思わず繰り返してしまう。
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