46人が本棚に入れています
本棚に追加
***
なつめはしばらく歩いてから、勢いよく振り返った。思った通り、孝史郎は自分の後をついてきていた。なつめが急に立ち止まったので、飛び上がって驚いている。
「あなたと話したくなくて席を立ったんだけど。わからなかった?」
あからさまな拒絶の言葉に、孝史郎は大きな体を縮めた。
「うん……あの、なつめさんがぼくのことを怒っているのは、わかっているつもりで」
「その呼び方もやめて!」
周りに誰もいないのをいいことに、なつめは声を張り上げた。呼び方にしろ視線の使い方にしろ、あの頃と全く同じように振る舞う孝史郎が許せなかった。そんな、愛おしいものを見るような目をしないでほしい。そうじゃないのだとしたら、そんな誤解をさせないでほしい。
「ちっともわかってないじゃない。私が怒っているって思うなら、どうしてついてくるのよ」
「せめて友達になれないかと思ったんだけど……やっぱりだめ?」
「友達ですって?」
思わず繰り返してしまう。
最初のコメントを投稿しよう!