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わかってもらえないのは当たり前だ。なつめは中学生の頃、孝史郎にただ一方的に別れを告げただけで自分の本当の気持ちを伝えていない。
孝史郎はおそらく、なつめが単純に孝史郎に飽きてしまっただけだと思っているのだろう。彼はそのころ、右足の故障で学校と病院を行き来するような生活をしていたから、なつめの真意を推し量る余裕もなかっただろう。
彼は悪くない。それでも、なつめは孝史郎に当たる以外にこの感情を処理する方法を知らなかった。
孝史郎と友人になど、なれるはずがない。そっちはできても、こっちはそんなに中途半端な気持ちじゃないのよ。馬鹿にしないで。
「じゃあ今ここでお断りしておきます。あなたとお友達にはなれません」
「そう、ですか」
「わかったらもう私につきまとわないで。それから、あのサークル、私はもう行かないから、それは好きにしてもらって構わないわ」
「あの」
「ついてこないで。何度言わせるの」
それで今度こそ、孝史郎はその場に立ち尽くした。なつめは泣き出したい気持ちを必死で押さえつけて、足音も高らかにその場を後にした。
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