君との恋は不毛

　実際、既婚者を見抜く方法はいくつかある。既婚者特有の怪しい生活や行動パターンがあるのだ。

（いくつか質問をして答えさせて、冷静に分析すれば、既婚者かどうかなんてきっと見破れる。この私に偽りは通用しない）

　さすがはAI女子、レイラは理想の王子を目前にしても舞い上がって冷静さを失うなんてことはない。
　レイラは誠の疑惑に挑むように、彼を観察しながら質問をなげかけた。

「誠さんって、どちらにお住まいなんですか？」
「豊洲ですよ」
　レイラの問いに、誠は綺麗な笑顔で答えた。

　春香は「え、それって、タワマン暮らしってことですか？」なんて身を乗り出したが、レイラの疑念は少し深まった。

　東京・豊洲といえば、ファミリー向けのマンションが多いイメージがある。　
　さすがに住んでいる場所だけで既婚者と決めつけるのは早計だが、データ上、豊洲の独身世帯はややマイノリティなのである。

「あれ？」
　何かに気づいた里奈が首を傾げて声をあげた。
「そういえば誠さんって今ご自宅から参加してます？　なんかホテルの部屋みたいに見えるけど……」

　確かに言われてみれば、誠の背景はビジネスホテルの一室のように見えた。

「ああ、今出張中で、ビジネスホテルに泊まっているんですよ」

　もし自宅から参加していれば、まさか妻子と一つ屋根の下にいながらオンライン合コンに堂々と参加する可能性は低いため、必然的に既婚者の疑いもはれる。
　しかし、まさかのビジネスホテルから参加とは……果たして本当に出張だろうか。