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僕のところへ綾がやってきてから2週間程経った。その間一緒に公園で遊んだり図書館で本を読んだり家で共に料理を作ったりもした。結構充実した日々だったけれど、一つ問題があった。それは金銭的な問題。綾の分の生活費を僕自身の稼ぎで賄うことが難しくなりつつあるのだった。だから何か出来ることがないかと頭を悩ませていたのだった。 悩んだ末に僕はブログをやることを思いついた。僕と綾の日常を綴ったブログ。綾と僕の関係については変に勘ぐられても面倒なので親戚だということにしておいた。すると、ただ綾の写真を載せただけでも結構な反響があった。僕が書く読書感想の記事なんかよりもよっぽど。もしかしたらこれで生活費ぐらいは入ってくるかもしれないと、僕は公園ではしゃぐ綾の様子を写真に収めて、小さい子と遊ぶのがどんな影響を自身に与えたのか簡単に考察してUPした。 一週間ほどである程度の額が入ってきた。この分なら本当に一ヶ月に10万円くらいは入ってきそうだ。今まで苦労して収入の道を模索していたことが馬鹿みたいに思えた。多分、それだけ綾の容貌が優れているということなのだろう。黙ってネットにあげるのも何なので、一応ブログに載せる件については事前に綾に相談しておいた。綾は特に何も言わずただいいよと言っただけだった。 「今日はどうしようか?」 朝ごはんを食べながら綾に尋ねた。今まで不自由な思いをしてきただろう綾に出来るだけ自由を体感してほしかった。だからその日の予定は綾に選択権を譲っていた。 「本読みに行きたい。読みたいのがあるから」 「わかった」 近くの図書館までは歩いていける。道中の街中に植えられている植物たちの緑を綾はチラチラと見ながら歩いていた。僕は空の青さと光る雲の方に目を奪われていた。こうしてみると案外僕らは似た者同士なのかもしれない。 僕は宮沢賢治の研究書を読みたくなったから、作家研究の棚の辺りで立ち読みをしていた。色んな人が色んな解釈を加えていて、僕も何れ賢治研究の本でも出そうかなと思っていた。科学も文芸も両方一流な人なんてやっぱり賢治ぐらいだろうなと思いながら、一通り読み終えたので、綾を探しに行った。児童書のコーナーにいるとは言っていたけれど。 絵本コーナーに綾はいた。座り込んで熱心に絵本を読んでいる。読みたい本ってなんだったんだろう? 「綾」 「うん」 頷いたまま本に夢中だ。こっそりと表紙を伺って見ると、風の又三郎の絵本だった。邪魔しても悪いと思って綾が満足するまで僕も座って読書をして待つことにした。 帰り道綾は読みきれなかった絵本を借りて帰った。絵本や児童文学の本ばかり。中には銀河鉄道の夜もあった。 「綾も賢治が好き?」 「うん。結構好き」 「そっか。僕も好きでよく読むんだよ」 「ふぅん」 綾は何だか不思議そうに僕の顔を見た。そうは見えないという事だろうか? 「本当だよ。家に全集も置いてある」 「そうなんだね」 やはり僕たちは気が合う部分が結構あるみたいだ。 「ねぇ、空は作家にならないの?」 「どうして?」 僕はそんな事を急に尋ねた綾に驚いてマジマジと顔を見た。 「だって、ノートパソコンで毎日何か書いているじゃない」 そうか。そういうことか。 「確かに書いているけど、中々出版というのは難しいよ。お話を書くのは好きなんだけどね」 「ふぅん」 そこで会話は途切れ僕達は黙々と帰路を歩いた。
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