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お母さんが仕事で帰りが遅くなると言った日、家に帰るとレイリーの姿が見当たらなかった。
そんなに所にはいないだろうと思う、ブリキのごみ箱の中や押し入れも見たがどこにもいなかった。
心配になった私はランドセルを部屋に投げ入れ、大きな音を立てながら玄関を飛び出す。
レイリーが行きそうな場所に心当たりはなかった。
もしかして私の事が嫌いになって出て行った?もしかして強盗かなんかに襲われた?
そんな考えで頭がいっぱいだ。
重そうな買い物袋を持っている女の人に、レイリーの事を説明し聞いてみる。
「見てないと思うけど……、地図もインストールされてるんだし、迷子になることはないんじゃないかな? 気になるんならロボ警察に行ってみれば?」
女の人にお礼を言い、ロボット警察へ向かう。
事を話すと、警官は落ち着いた様子でパソコンを立ち上げ、レイリーに内蔵されている認識番号を打ち込み調べる。
ものの数分で調べ終わり、警官はレイリーの居場所を教えてくれた。
それは私が通ってきた道の途中を曲がった住宅街だった。
警官にお礼を言いレイリーのいる場所へ向かう。
電柱の傍で頭部を左右に振っているレイリーに大声で呼びかける。
「かなみ、どうしたの?」
冷静な声で言うレイリー。
「心配したんだよ!家に帰ったらいなくて」
「心配……、それはワタシを思って悩んだと言う事だよね。ありがとう」
レイリーが何で外に出たのか、私の事が嫌いになって出て行ったのか思いながら聞くと
「かなみともっと色んなことを話したくて、話題を探してたんだよ」
肘を曲げ両手を前に出し上下に揺らすレイリーは、身振り手振りをつけて話すに人間のように思えた。
何も言わずに出て行っちゃったら心配するよ、と言うとサプライズで話題を振りたかったと返すレイリー。
「ありがとう。帰ろ」
レイリーの布で覆われている鉄の手を取り一緒に帰る。
友達用ロボットは、友達のように接するようプログラミングされている。
なので、意見が対立し喧嘩になることもあった。
時に私から先に謝ったり、時にレイリーが先に謝ったり。
長期出張からお父さんが帰ってきた。
お父さんは最後に見た時より肌が焼けており、しわが増えたような気がする。
「お父さん!お帰り!」
私がお父さんに言うとお父さんも嬉しそうに「ただいま」と返す。抱きつくのは少し恥ずかしく、それはしなかった。
レイリーも出迎える。
「初めまして、お父さん。おかえりなさい」
レイリーを買ったお父さんは、宅配でレイリーを送ってきたので、お父さんとレイリーが話すのは初めてだった。
「レイリー、初めまして。かなみの父です」
お父さんが帰ってきたその日はテーブルをみんなで囲み、出張先での話とレイリーの話で盛り上がった。
心なしかレイリーが笑っているように見えた。
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