一幕 ②南陽黄巾軍

4/7
前へ
/413ページ
次へ
 「あれ? 韓忠さん?」  「じじじ状況はどうなってる!? ほほほ包囲軍を率いているのは!? かかか数は!?」  「それで出てきただか? 大丈夫だよ。こっちは十万越え。向こうはこっちの半数以下。籠ってれば向こうは退かざるを得ないだよー」  韓忠は眩暈がした。  野戦での駆け引きが巧みなので忘れがちになるが、趙弘はもともとただの農民なのだ。  戦での駆け引きを理解しきることは難しいのかもしれない。  その状態になれば周りの雰囲気を察し、マズいことはわかるのかもしれないが、そうなった時には手遅れなのだ。  「ああああのなあ。おおお俺たちが、えええ宛城を、どどどどうやって、ててて手に入れたか、わわわ忘れたのか? いいい戦に不慣れな、じじじ十五万。ほほほ包囲されて、いいい一週間も、ももももてば、いいいい方だぞ」  南陽郡は戦の起こらない土地だ。  そのため、大軍に包囲された宛城はあっさりと降伏したのだ。抗戦を主張したのは太守の褚貢とその旗本だけだった。それ以外は呆れるほどあっさりと降伏した。  それを趙弘は思い出した。  「………もしかして、マズイだか?」  「いいいいや、いいい今は、ここここちらの数が、おおお多いことに安心して、ききき気が大きくなってる。ししし士気が高いうちに、ううう動く必要が、あああある」  士気が高いうちに。  そう。  人数が多いということは、その分物資の消費も早いのだ。  特に兵糧の有無は士気に大きく影響する。  幸いなことに付近の城から物資は集めてあった。  心を挫かれた張曼成が復帰した時、すぐに行動に移れるようにと韓忠が用意していたものだ。  皮肉なことに、それが生きている。
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加