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「アタシはね、ぜんちゃん。そろそろ本気の恋をしてほしいの」
「俺はいつだって全力ですけど〜?」
「それはベッドの上ででしょ? アタシが言ってるのはメンタル的なことよ。わかってるんでしょ?」
「……それでなんになるの」
「アタシたちゲイだってね、人間なのよ? 人として生まれたからには、幸せのひとつやふたつ経験しとかなくちゃもったいないでしょ?」
「で、みどりちゃんは、あーいうの勧めるわけ?」
ちらりとその男に目線をやりながら、尚も文句を言う。親切を仇で返すようだけど、みどりちゃんはそれも受け入れてくれると知ってのことだ。俺がいつもここで選ぶのは、どちらかといえば遊び人タイプ。彼らは高確率で見た目どおりの夜を提供してくれる。
「ぜんちゃん、アタシ基本的に人の好みって変わらないと思うのね」
「……」
「どうせ好きになるなら、最初から好みのタイプに行った方が早くない?」
「まーそーですけどー」
「何よ棒読み〜」
もう一度、みどりちゃんの勧める男に視線をやると、偶然目が合った。ニコッと笑いかけられた俺は、場にそぐわないその爽やかさに思わず目をそらしてしまう。
みどりちゃんは、わかっててこういうのを勧めてくるんだ。
俺が好きだった、あいつに似たタイプを。
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