第2章 人呼んで小悪魔男子

5/10
前へ
/390ページ
次へ
「アタシはね、ぜんちゃん。そろそろ本気の恋をしてほしいの」 「俺はいつだって全力ですけど〜?」 「それはベッドの上ででしょ? アタシが言ってるのはメンタル的なことよ。わかってるんでしょ?」 「……それでなんになるの」 「アタシたちゲイだってね、人間なのよ? 人として生まれたからには、幸せのひとつやふたつ経験しとかなくちゃもったいないでしょ?」 「で、みどりちゃんは、あーいうの勧めるわけ?」 ちらりとその男に目線をやりながら、尚も文句を言う。親切を仇で返すようだけど、みどりちゃんはそれも受け入れてくれると知ってのことだ。俺がいつもここで選ぶのは、どちらかといえば遊び人タイプ。彼らは高確率で見た目どおりの夜を提供してくれる。 「ぜんちゃん、アタシ基本的に人の好みって変わらないと思うのね」 「……」 「どうせ好きになるなら、最初から好みのタイプに行った方が早くない?」 「まーそーですけどー」 「何よ棒読み〜」 もう一度、みどりちゃんの勧める男に視線をやると、偶然目が合った。ニコッと笑いかけられた俺は、場にそぐわないその爽やかさに思わず目をそらしてしまう。 みどりちゃんは、わかっててこういうのを勧めてくるんだ。 俺が好きだった、あいつに似たタイプを。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加