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頼親は、俺の幼馴染だ。染髪なんてしたことのない健康毛の短髪で、ガタイのいい182センチの堅物スポーツマン。目つきは鋭く愛想の良いほうではないけれど、性格はどちらかと言えば天然。良くも悪くも友達思いで、熱いハートを持った今時珍しい部類の人種だ。
いつから、とかなんで、とか、好きになったキッカケなんて、覚えていない。気がついたらいつも傍に居て、気がついたら好きになっていた。自分がそうだと自覚したのも、ヨリを好きだとわかってからだったから、ある意味ヤツは俺にとっての目覚めでもある。
スペック的に当然のことながら、ヨリは女にモテた。でも、ヤツの一本気な性格上、一旦彼女にしたからには長く付き合うタイプで、女性経験人数は、ほぼほぼゲイな俺の方が多いくらいだった。もちろんヨリは、浮気なんか絶対しない。かと言って、彼女が全てというわけでもなく、俺との先約があれば必ず優先させてくれていたから、その度誤解しそうになる自分を戒めるのが大変だった。あいつの友達思いは、ある意味罪だ。
ヨリにとっても、俺が特別な存在だった自覚はある。彼女ができれば、まず俺に紹介してくれていたし、3人やダブルデートで遊ぼうと誘われることも多かった。すでにヨリへの気持ちを自覚していた俺にとっては、甚だ迷惑な話だったのだけれど、その頃はいい友達を演じるため必死に笑っていた。
そんな片想いのまま5年を経過すると、さすがに俺も疲れ果ててしまっていた。大学進学を機になんとかヨリ離れしようと、ヤツに内緒で東京の大学を受験したのだが、どこで聞きつけたのか、あいつも東京に進学を決めてしまっていた。満面の笑みで、これでまた一緒に居られるな、と言われた時の絶望感は、今でも鮮明に思い出せる。
絶望したのは、ヨリと離れられなかったからだけではなかった。あいつの付き合って3年になる彼女も、一緒に上京してくることになったのだ。同高で、ヨリのいた空手部の女子マネ。俺もよく知ってるやつだった。
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