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「で、次そっちね?」
「……です。スケジュール大丈夫そうですか?」
「葉子ちゃんが居ればなんとかなるっしょ。差し替えは多分要らないと思うけど、一応準備よろしくね。チケは?」
「取りました」
「よしよし。デキる部下を持ってボクは幸せだな〜」
「あ、あの……」
デキない部下なことが露呈してしまった俺は、どのタイミングで口を挟めばいいのかわからずにいた。
「あ、光井に嫌味言ったわけじゃないからね。こういうの、最初はあるある。でも次はやんないようにね〜」
そう言いながらロッカーからジャケットを取り出してサッと羽織る神田さん。いつものダラッとした様子からは想像もつかない、流れるような仕草だ。そういえば、いつの間にか無精ヒゲもない。
「それより俺が帰るまでのロンダーさん、よろしくね? 楽屋はみっちー頼みだからさ」
こんな場面でのみっちー呼び。俺の気持ちを解そうとしてくれている上司の優しさがしみる。
「は、はい。すみませ……」
「わ、時間やばいよね葉子ちゃん?」
「ですね」
「タクシー居るかなぁ」
神田さんは、いつもおろしている長めの黒髪をまとめてキュッとしばった。少し下がった目尻のせいで優しげな印象だけど、顔を隠すものがなくなると、スッと上がった眉尻に凛々しさを感じる。
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