第1章 足の速さに自信ある?

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「それにしても、みっちーが善之助なぁ」 「……すみませんね」 「いや、ギャップあっていいと思うけど?」 どんなフォローも効果なしだ。善之助なんて名前は、どこからどう見ても俺の見た目にそぐわない。 「でしょ~? ツーブロ茶髪のイマドキ男子なのに、善之助! まじ可愛くないですか? 俺全力で推してるんですけど、なかなか浸透しないんすよね~」 「ほんとやめてください」 「なんで? 可愛いのに」 ため息をつくと、ロンダーさんたちがおかしそうに肩をふるわせた。俺たちのこんなやり取りは、彼らにとってはちょっとしたコントに見えるらしい。 「ま、みっちーも能美も可愛いってことでいいじゃん」 「神田組は安泰だなぁ」 「あざーす!」 なんでこの人は、こんなにニコニコしているんだろう。ロンダーさんの手前、愛想笑いでその場を切り抜けたものの、楽屋のドアを閉めるなり俺は無表情になった。 「一緒に帰ろうぜ、善之助!」 「……センパイ、もはや嫌がらせでしょ?」 「んなことないって~」 「俺、あんま好きじゃないんすよね、その名前」 「えーなんでよぉ? お前みたいな可愛い顔でそれってインパクト強いし、まじうらやましいんだけど!」 「……せめてフルはやめてくれません?」 「ふぅん……じゃあ、ぜんちゃん?」
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