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 それが決まったのは、まだ能力を制御しきれていなかった頃だった。 「結晶化には二つの注意点がある。集中不足と、力量過多だ。キール、お前はどうやら力量過多の様だが…」  指先に透明な結晶の欠片を摘まみ、ユースベルはキールウィラの周りを歩く。  足元には水面が揺れ、水色の淡い光に満ちていた。  光の根源はキールウィラの座した周辺から溢れ、延びていた。 「お前の生まれ持った性質がそうさせているのだろう。長老は修練は必要ないといったそうだが、俺はそう思わん」  ユースベルの『長老』という言葉を耳にしたキールウィラの眉が、ピクリと動く。  キールウィラから延びる光を避けるようにユースベルが水面を離れた瞬間、眩い水色の光が辺りを包み込んだ。  光が退くと、そこには水面ではなく無数の透明な結晶が突き出していた。  キールウィラは静かに瞼を開くと、己の周囲を見渡し、溜息を吐いた。 「失敗だな」  鋭利な結晶に、ユースベルは足を踏み出す。  見る間に、結晶は溶け、水面に戻っていくのを、キールウィラは見た。 「師匠」  キールウィラは、目を伏せたままユースベルを小さく呼んだ。 「なんだ、キール」 「僕には本当に、修練が必要なのでしょうか」  わずかに揺れる水色の瞳を見返して、ユースベルは黙った。 「僕は、もうじき儀式を行うようになる。そうしたら…」 「キール」 「僕は…」 「お前は、『増やすもの』である前に、守りたいもののために力を使うことになる」  ユースベルの言葉に、キールウィラは目を瞠った。 「え…」 「俺ができることはお前にその力の使い方を伝授してやることだけだ。儀式を行うか、力を使うかは、お前次第だ」 「師匠?」 「お前は『増やすもの』である前に男なんだ。それを忘れるな」 「!…あ、ありがとう…ございます」  口元を押さえ、小さく礼を零すキールウィラに背を向けたユースベルはそのまま離れていく。 「師匠?あの、どこへ?」 「長老に呼ばれている。今日はここまで。次に備えて休め」 「はい」  その背中を見送り、キールウィラは立ち上がると、己の手を見た。  華奢な指。  水面に映る顔は、男らしい、というよりも少女のようである。  守る。  誰かを守ることなんて、自分にできるのだろうか。 「はい…師匠」
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