第六話

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… … … 「はぁっ、……っ、怜様……、先輩から、キャンプに誘われました。 ちなみに一泊……っ」  最奥を素早く突いて腰が震えた矢先、枕に顔を埋めて啼いていた真琴からこんな事を言われた。 「ん、……うん?」  俺達はその関係上、色気のあるピロートークをする二人ではない。  だからってそれ、フィニッシュ直後に言う事かな?  俺まだ真琴の中に居るんだけど。 「来いって、言われまして」 「うん」 「男が三人、女が四人の構成らしいです」 「うん」 「おれが入ったら、男女比率ちょうどよくなるらしくて」 「うん」 「何回も断ったんだけど、……来いって」 「うん」  真琴が、一泊のキャンプ旅行に行く?  ……いいんじゃない。  男女比率を合わせる時点で主催者の下心が見え見えだけれど、この時期はみんなそれを分かっていて参加するんじゃないの。 断る方がよっぽど珍しい。  何より俺は最近、気付いた事が一つある。  真琴は変人だと遠巻きに見られているわけじゃなく、クラスに一人居ると場が和む〝不思議な人〟として周囲から認知されている。  講義以外の時間は俺と居たいと言いながら、近頃「先輩からの誘いを断れなくて」の台詞が多くなった。  それはつまり、多方面から可愛がられている証拠だ。 良いことじゃないか。 「ちょっと怜様! うんうんって、それだけ!?」 「え、何が?」 「恋人なら、そこは引き止めてよ! 真夏のキャンプ、しかも一泊だよ! 男女四対四のお泊りなんて何が起こるか分かんないじゃん!」 「別に何も起こらないでしょ。 あと、俺達は付き合ってるわけじゃないから。 何回言わせるの?」 「怜様……っ」  ……好きにしたらいいじゃん。 なんでそれを俺に報告するのかな。  下唇を出していじけている真琴の横顔は、見ないようにした。  真琴は、いつからいつまで俺の恋人のつもりでいる気なのだろう。  切り出そうとした話し合いを軽々と躱し、俺の言葉は得意のとんでも発言で目くらましをして受け入れようとしない。   さて。 すっかり萎えちゃったんだけど、いつ性器を抜こうか。 今着けているゴムでストックは尽きたから、三回目はもう無い。  いや気分的に、……明日以降は、かな。  真琴のいじけ顔をよそにこんな事を考えていた俺はこの時、実は相当に動揺していたのだという自覚がまるで無かった。 「抜くよ」 「……んっ、ふぁっ……っ」  グチュ、と卑猥な音を立てて引き抜いた性器から、先端に欲の溜まったゴムを慎重に外して上部で結ぶ。  真琴と出会う前は童貞だった。 はじめのうちは装着にも手こずっていたというのに、こんな事まで手際が良くなった。  思えば前戯も、挿入も、初回こそ失敗したけれど少しずつスムーズになっていったっけ。 「はぅぅ……」  貫くものがなくなった真琴の体が、くたりとベッドに沈む。 その身体は体毛が少なく、色白で華奢で、お尻はもちもち。  ベッドに横たわった真琴の姿は情事後の扇情的な光景に違いなく、見ているだけで三回目の波が襲ってくる。 「………………」  ふぅ、と横向きになった真琴の下唇がまだいじけていて、言葉に詰まった。 真琴が何を求めているのか分からないほど、俺は鈍感では無い。  分かっていて、言えないのだ。  この関係は一体何なのだろう。  セックスをしていたら、相手を縛る事が出来るようになるの?  ……いや、ないない。  だって俺達は付き合ってないんだから。  名前の付けようがない関係なんだから。  引き抜いた際に擦られた内壁が疼くのか、ジッとして動かない背中に触れようと手を伸ばしかけてやめた。
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