もう逢わない、もう逢えない。

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 最初はこの人が家事をできるなんて思えなかったし、不安しかなかったが、いつの間にか、今まで決して埋まることのなかった私の隣にすっぽりと嵌っている。私が大した会話をしなくとも、自分の趣味に没頭しようとも、ただ自然と隣に居る。寝ていたり、スマホゲームをしていたり本を読んだり様々だが、そんな退屈そうな時間をわざわざ過ごしにくるこの人は本当に物好きだと思う。  ちらりと隣に並んだ夜々塚さんに視線を向けると、楽しそうにクルクルと傘を回している。雨粒が飛び散って迷惑だ。その表情はまるで子供のようだった。 「正さんと一緒なら、雨でもいい気分だなぁ」 「……はぁ」 「なんで溜息なんだよー」  ────愛おしい。  この人と出会い、知った感情。この人の笑顔を見ると、嫌な事が吹き飛ぶ。胸がきゅっと締め付けられ、もっとその表情を見ていたいと欲張りになる自分がいる。拗ねていても、悩んでいても、私の下で快楽の涙を流していても、そのころころ変わる表情に自然と振り回される。  しかし、この愛おしいという感情が、恋愛のそれなのかが分からない。けど、この人が押しかけてくるのが嫌ではない自分もいる。もっと知りたいと伝えたあの言葉は本物だ。この人とのキスも、正直好ましいと思っている。  この人からの恋愛しよう宣言から早一ヶ月近く。 「(……答えが出ない)」   ****
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