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「はぁーーーー、キスしてぇ。今日もムカつくくらい男前だなぁ」
「今日は小説を読んで帰るんでしょう」
「そうだよ。明日正さんが大切な会議があるって言うから」
「空気を読むことができるようになりましたね」
「空気は読むものじゃなく吸うものだろ。けど、正さんのためだから読んでるの」
「……そうですか」
「ほら、俺が正さんに襲いかかる前に、早くこの前の本貸して」
私は立ち上がり、この前彼が食い入るように読んでいた小説を寝室の本棚から持ってきて手渡す。そして同時に夜々塚さんの前に屈み、嬉しそうに口角が上がった唇へ自分の唇を重ねた。一瞬だけ触れて、お互いの熱を味わう間も無くすぐにそれを離す。その間彼は放心状態だった。
そして、何食わぬ顔で隣に座った私に向かって叫ぶ。
「も、もう一回!!」
「何故です。甘いキスは苦手なのでは?」
「そ、そうだけど、なんつうか、もう一回したい」
「ワガママ」
「だってあれじゃ全然堪能できないよぉ。お願いもう一回」
「堪能とは……」
「だって、正さんからキスしてくれるの……嬉しいんだもん」
「…………」
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