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愛おしい、この人のことが。どうしようもなく。絆されてしまった。
同性でも、出会って日が浅くても、どんな出会いでも、性的観念が緩くても、その全てを許容できてしまうほどに、今この人を愛おしいと私は思ってしまった。
「正さん?」
私は抱きしめても尚ある隙間を埋めるように、力一杯夜々塚さんを抱きしめ、頰を撫でて口付けた。そしてゆっくりと唇を離し、口を開く。
「近々、何処かに出掛けましょう」
「えっ、行きたい」
「私の事、貴方のこと、お互いを知る期間はそれで終わりにします」
「…………え」
「終わりにして、新しく始めたい」
「……あ、うそ」
「だから、考えておいてください。どこに行きたいか。私も考えます」
「うん、うん!」
落ち着かない夜々塚さんの額にキスを落とし、抱き締める腕を緩め目を閉じる。なんだかスッキリした。心の靄がなくなったようだ。明日の会議もきっと心配ない。思考はゆっくりと二人分の体温に引きずられるように落ちていく。
「……おやすみなさい」
意識が途切れる寸前、甘い声が鼓膜に届いた。
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