つまらない男

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「すみませんが、このお見合いはなかったことにしてください」 「……何故ですか?」 突然の提案に、私もスプーンを置く。店内に流れる雰囲気の良いジャズだけが、この沈黙を少しマシにしてくれた。 彼女とは、40になっても仕事ばかりで結婚しない私を心配した両親に、無理やり引きずられるように連れて行かれた見合いの場で出会った。 教員をしているらしく、言葉遣いや立ち振る舞いがしっかりしていて、清潔感があった。初対面で多少なり好感を持ったし、両親からの押しの強さもあり、何度かデートを重ねていた。 一緒に居て楽しい、というよりも……一緒に居て苦にはならない。それ以上の感情が浮かばなかった。 彼女は何故、という私の問い掛けに、小さく笑った。
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