三度目の夏休みと初めての夏休み

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三度目の夏休みと初めての夏休み

母さんが死んでもう三年になる 母さんは俺の目の前で車に引かれた。 当時のことは今でも俺の脳裏に焼き付いてしまっている。 それ以来俺は常に一人だ。 親しい人を作るのが怖い。 親しくしていた人がもし死んでしまったら? そんなことを考えてしまう。 だから俺は一人でいた。 そして母さんが死んで三度目の夏休み。 親父が俺に「紹介したい人がいる」 といって、俺を連れて行った先にいたのは 親父と同じかそれより少し若い程度の茶髪の女性と 風になびく綺麗な長い黒髪の女性がいた。 二人は俺と親父に気づくと手を振りながらこちらに来る。 「こんにちわ、泰造さん」 「スイマセン待たせましたか?」 「いえ、つい先ほど私たちも来たところです」 「そうでしたか、あははっ!」 茶髪の女性は親父と笑顔で話している。 そして、茶髪の女性はこちらを向き、微笑むと 「初めまして・・・未来君よね?私は灯里っていうの」 っと俺にやさしい声で挨拶をしてくる。 「・・・初めまして」 俺は灯里と名乗った女性の方を見ず、返事をする。 ・・・相変わらず人付き合いというのは苦手だ。 「申し訳ない灯里さん!こいつ人付き合いが苦手でして・・」 父がそう言って俺の脇腹を小突く。 「いえいえ、あ、ほら未来?あなたも挨拶して?」 灯里さんは笑顔で親父に言うと、そばに居た女性に話しかける。 「初めまして、未来です・・・その・・・よろしくお願いします・・・」 未来と名乗った女性はもじもじしながら俺と親父に挨拶をする。 「初めまして未来ちゃん!『みき』、か・・・うちの『みらい』と同じ漢字なんだってね?」 「は、はいっ!そうです!」 親父の問いかけに緊張しながら未来と呼ばれた女性は答えていく。 「よろしく・・・つかさ、親父、これなんだよ?」 俺は未来に挨拶をし、なぜ親父にこの人たちを紹介したかを問いかけた。 「あ、あぁ・・・それなんだがな・・・」 親父は言いづらそうにしながら、灯里さんの方を見る。 灯里さんは親父に微笑むと親父の手を握った。 「その・・な・・・実は俺、灯里さんと付き合ってるんだ」 親父は握った灯里さんの手をギュッと握り返し、 俺と未来にそう言って灯里さんを抱き寄せる。 「は?」 「え?」 俺と灯里は呆気に取られていた。 「そ、それじゃぁまさか・・・親父・・」 「お母さんもしかして・・・」 俺と未来がそう言うと親父と灯里さんは 顔を向き合わせ、微笑みあうとこちらを向き。 「結婚しようと思ってる」 と親父が俺と未来にはっきりと言ったのだった。 こうして、母が死んで三度目の夏休みに 新しい家族が出来て初めての夏休みが始まった。
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