恩羅院のひみつ

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 内輪揉めしながら逃げ回るうち、2人はついに袋小路に追い詰められてしまった。しかし通報フェチの淼は、ここで伝家の宝刀・スマホの緊急通話に思い至る。 「行き止まり…淼、あんたの恩那様パワーでなんとかできない?」 「かわいそうだけどもう通報しかないね。24時間(にじゅうよっじかん)24(ツーフォー)24(ツーフォー)!」 「結局国家権力頼みかい。まあいいわこの際、過激描写でペナルティ喰らうよりは…」  大好きな通報を堪能できると、笑顔でスマホを手にする淼。だが… 「ああっ!白子ちゃん圏外だ、ここ圏外だよ⁉︎」 「もはや文明が遮断された魔境ってことね。恩羅院恐るるべし、敵ながら天晴れだ」 「(オン)()(イン)御麩(オフ)()(イン)なんだよ、白子ちゃん!」 「さほど上手くないわ!あでも、さっき出たお茶うけが麩菓子だったわね」  圏外の原因はそんなに大層なことではなく、単に深い山中だから、もしくは淼のスマホが楽○天モバうわあ何をするやめ  壁を背に不毛なやり取りを続ける2人に、僧たちがジリジリとにじり寄る。こういう時の手は当然、両手を前に突き出してワシワシするのが礼儀だ。 「恩那様…さあ我々と極楽浄土へ…」 「この際、そちらの下僕(白子)も何かしら使い道があるものと存じます」
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