恩羅院のひみつ

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 淼が持ってきたのは、とある寺院?のチラシであった。 「ドアポストにねじ込んであったの。でも読めなくて」  国語が得意分野の白子が解読を試みる。キャッチコピーはこうだ。 【来たれ!女IN!見学者風情が!】 「何だかいろいろ怒られそうだね。フォレスト会長も関係者かな?」 「あんたも怒られそうだけどね。んっと、恩羅院(おんらいん)?『修験道(しゅげんどう)山本山派恩羅院』だってさ」  紙一面に、もんのすごい筆文字で書き殴った投げやりなデザイン。太い筆文字がびっちりと書かれ、一見黒い紙のように見える。「書:尾張市長 漬椴毛(つけとどけ) 好代(すきよ)」との説明もある。 【当院は千二百年に渡り修験道を追求して参りました。厳しい修行は元来女人禁制でありましたが、昨今の世情を鑑み、このたび当院でも女性の修験者を受け入れることと相成りました】 「えー、滝に打たれたり、コブラやヒョウモンダコやヤドクガエルと戦うんでしょ。そんなの男だけでやってよ。あと1200年女人禁制でいいよ」 「なぜ紫色になって変死しそうな猛毒生物ばかり…てか何言ってんの、持ってきた張本人が」 「えへ、そうでしたー。でも危ないのはダメ。廃棄っと…」 「行きましょう」  白子は無駄にやる気満々。メガネの赤いアンダーリムがキラーンと光る。いやそこはレンズだろう。 「ふえぇぇ?滝行やるつもり?」 「見学ってんだからいきなりそれはないでしょ。早速行くよ淼!うはー女人禁制いっ!1200年の汗臭!」  淼は、頭の両サイドにまとめたお団子(シニヨン)をいじりながら、転校生の案内と悪ノリが生きがいの白子にチラシを見せたことをしこたま後悔していた。
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