恩羅院のひみつ

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 実際、悪ノリ中の白子は日常とはまるで違う行動力を見せる。下校から1時間半、2人は深い山にある長い階段をゼーゼー言いながら登り、恩羅院までたどり着いていた。  修験道山本山派恩羅院。  1200年の歴史。小さな山寺には自然な侘び寂びが感じられる。巨岩が苔むした様が、中途半端な歴女(刀剣や戦国時代にのみ興味がある)の白子をときめかせる。  逆に淼は、古色蒼然の鬱蒼たる雰囲気に少し引き気味。さらに妙なことを言い始めた。 「本当に恩羅院っていうんだね。でも今回のテーマは『オンライン○○』なのに、いつもこうやってテーマを曲解して変な方向にこじつけるから、16連敗もするんだよ?激弱のお相撲さんだってMAX15連敗しかできないのに」 「…誰の、何の話よ」 「あれだよ、『投稿皆星』の『妄言コンクール』」 「ああ、あの泡沫ヨゴレ作家ね。忘れなさい」  大きなお世話だ。白子はひとしきり暴言を吐いた後、寺の渋い様子を見渡しながら驚愕の声を上げた。 「うはーたまらないねこの雰囲気…って、おおう⁉︎囲まれてるー⁉︎」  さすがに山伏とも呼ばれる修験者(しゅげんじゃ)たち。足音もなく数人が2人を取り囲んだ。中で一番の年長者と見受けられる、白髭の老いた僧が話しかける。 「よくぞ、この恩羅院においでなすった。歓迎しますじゃ。ああ、この者どもは皆修験者での、いわばわしの弟子じゃよ。ムハハハ」 「…『じゃ』とか『わし』って言わせればおじいさんが表現できると思ってるわね。安直!ったくあの泡沫…」 「実際、『じゃ』はお年寄りじゃなく広島周辺の人が言うんだよね、白子ちゃん」  険しい表情にボロボロの修験装束が、修行の厳しさを物語る。それでも白子たちは好意を持って迎えられているようだ。
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