1 スパルタの平和

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緊急警報音が遠くから接近してくる。 男は気にもしていないようだが、どんどん大きくなる警報音に身を起こす。 「え、手入れ?」 窓から警察と消防の緊急車両が見える。 内線が鳴る。 「爆弾だって。念のため避難しろって」 案内所はいつも通り冷静だった。 客の男は慌てて逃げ支度を始める。 扉のロックが自動的に開く。 「逃げちゃって大丈夫かな」 警察も消防も避難待ちらしい、踏み込んでこない。 「お客さん、お勘定」 服を整えて外に出る。 ドアを開けると緊急車両が道の両側を陣取っていた。 その向こうには人だかりが出来ている。 赤色灯の明滅が周囲を照らす。 右手の急車両の間を抜けて人だかりに紛れる。 「どっちだろうねぇ」 「どちらも過激派だか――!」 オレンジの閃光の後、建物を煙が包んだ。
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