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「客がモナドに到着したようです」
偽の室内状況がモニターされている。
大柄な見かけによらず、細心の注意を払える男だった。
「順路の管理を頼む」
隠すべきは隠す。ドリアンは夢でも見て通過してもらう予定だった。
庁舎の六十階。
席に座ると、
「それでは失礼いたします」
着席のタイミングで偽装が解かれた。
大男は黒い塊のような存在感と共に首長室を去っていった。
自動ドアが施錠される。
思わずカメラに目が行く。
慣れては居てもやはり気になる。
再び立ち上がって窓の外を見た。
最上階の窓からあえて空を見上げる。
昼の二時。
衛星軌道上の厄介な客。
地上を見れば2ndスパルタの市街が、その向こうには強襲揚陸艦が長く影を落とす旧市街が、赤道の太陽が放つ熱射で陽炎のように揺らいで見えた。
「パックス-スパルタ、か」
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