1 スパルタの平和

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「客がモナドに到着したようです」 偽の室内状況がモニターされている。 大柄な見かけによらず、細心の注意を払える男だった。 「順路の管理を頼む」 隠すべきは隠す。ドリアンは夢でも見て通過してもらう予定だった。 庁舎の六十階。 席に座ると、 「それでは失礼いたします」 着席のタイミングで偽装が解かれた。 大男は黒い塊のような存在感と共に首長室を去っていった。 自動ドアが施錠される。 思わずカメラに目が行く。 慣れては居てもやはり気になる。 再び立ち上がって窓の外を見た。 最上階の窓からあえて空を見上げる。 昼の二時。 衛星軌道上の厄介な客。 地上を見れば2ndスパルタの市街が、その向こうには強襲揚陸艦が長く影を落とす旧市街が、赤道の太陽が放つ熱射で陽炎のように揺らいで見えた。 「パックス-スパルタ、か」
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