皐月の場合

5/6
前へ
/10ページ
次へ
『ねえ、皐月。あなたは私の自慢の娘よ。優しくて他人を気遣って、聞き役に回ってしまう…そんなあなたにはもうすぐ素敵なパートナーが現れるわ』 「え? なに…いきなり何の話なの?」 『あなたを愛してくれる人が現れるわって話』 「…お母さん…私、お母さんがいてくれたらいいの。他の人には甘えられないよぅ」 『大丈夫。お母さんはあなたの傍にいるわ。その人とあなたが出会うまで』 「嫌だよ。ずっと一緒にいてよ…っ」 『皐月、あなたもいつか母親になる。そのときにようやくわかるわ』 「何? 何がわかるの?」 『私は、あなたを愛してるってことが』 画面の向こうで優しく微笑む母の映像にまたノイズが走った。 「おかあさ…っ。顔が見えなくなってる」 『これだけは忘れないで、皐月。あなたを愛してるわ。ずっとずっと…。しあわ…せに…なりなさ…』 「なにっ? 聞こえない! お母さん!?」 徐々に雑音混じりになっていく音声は、音量を下げながら…消えた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加