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気を失っていたのか。
窓から眩しい光が差し込んできている。
急に刺さる光りに瞼をシパシパさせながら腫れぼったい顔を確認する。
皐月はパリパリと突っ張る頬を手のひらでほぐしながら、重たい顔の代わりに頭と心がスッキリしているのに気づく。
「夢…お母さんの夢見たんだ…」
穏やかに微笑んで、自分の娘に惜しみない言葉をかけてくれた。
悲しい気持ちも嬉しい気持ちも嘘ではなくて。
手に持っていた携帯電話は電源が落ちていた。
電源ボタンを押しても、充電器に繋いでも、充電ランプがつくことも液晶画面に明かりが点ることもなかった。
「壊れちゃった…。…あ、私が投げたんだっけ? ……あれ? どうして?」
原因が思い出せなくなっていた。
落としたのかな、と首を捻っていると目覚まし時計のアラームが鳴り響いた。
「わわっ! 顔! どうにかしないとっ」
腫れぼったい顔では出勤できないと、いろいろ手をつくして日常へと戻っていった皐月だった。
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