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道路の手前まで歩くと無人タクシーが目の前で止まった。
脳内のマイクロチップがサーバーと通信して、家を出る直前に呼び出したのだ。
ゴルフバッグをトランクに積んで乗り込むと、脳波を探知して車はゴルフ場に向かって走り出した。
家から五百メートル先の幹線道路は完全磁気化されているので、タクシーは磁気浮上走行に切り替わった。
ここからゴルフ場まで百五十キロあるが、平均時速三百キロの無人タクシーなら三十分で到着する。
ゴルフ場には一緒にラウンドする光男と冬樹が既に到着済みで、クラブハウスで鎮静効果のあるホットドリンクを飲んでいた。
日常生活の中で感情の起伏はほとんどないが、さすがにスポーツをするときだけは感情が高ぶってくる。
「おはよう、早いじゃないか」
私が笑顔で朝の挨拶をすると、二人もニコニコしてこっちを振り向いた。
「おはよう! お前が遅いんだよ。俺はもう今日のコンデションをばっちり把握したぞ。ゴルフは自然と闘うスポーツだ。相手より早く戦場に着くのは勝つために欠かせない儀式なのさ」
光男が言うともっともらしく聞こえる。何しろこれまで五百回以上ラウンドして、光男に勝てたのは八回だけだ。それでも最近はスコアの差が縮まってきて、二打差、三打差と僅差の勝負を繰り返している。
冬樹は出入りの多い忙しいゴルフだ。飛距離は三人の中で一番だが、グリーン周りで躓いて一ラウンドに必ず大たたきが一、二回ある。
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