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くじを引いてオーナーは光男になった。ティーグラウンドに立った光男は、たった一回の素振りでファーストショットを放った。
ビシュとドライバが空気を切り裂く鋭い音を残すと、ボールは雲一つない青空に吸い込まれてゆく。それが描く見事な弧に見とれていると、フェアウェイのど真ん中に白球が着地した。
「ナイスショット!」
碧い芝の上をボールが転がってゆく。
続く冬樹も力みのないスイングで、飛ばし屋の面目躍如とばかりに光男のボールをキャリーオーバーしていった。
次は自分の番だ。二人が好打を連発したので若干肩に力が入る。こんな時にマイクロチップが機能していれば、すぐに筋肉に適切な指示を出し調整してくれるのだが。
「上空は右方向に風が巻いているようです」
ロボットキャディがゴルフ場のセンサーが感知した情報を伝えてくる。人間のキャディならこんなとき、力が入らないように配慮してくれるのだが、ロボットキャディは容赦なく自分の務めを果たす。
「しまった!」
渾身の一打は右への風を意識してフックが掛かりすぎた。
「ラフですね」
ロボットキャディは容赦なく情報を伝える。
ラフは深く、ボールの行方を見失ったが、こういうときのロボットキャディは頼りになる。絶対にボールを見失うようなヘマはしない。
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