プロローグ

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 あっという間に九ホールが終わった。  光男は好スコアに満足して動きが軽い。先頭に立ってクラブハウスに向かい、ゴルフ場の特製ドリンクを飲んでいる。  私は四打差つけられ絶不調だ。冬樹にも一打差のビハインドで、久しぶりにこのメンバーで最下位になりそうだ。  気を取り直して、冬樹と共に特製ドリンクを手に昼食をとる。 「七番のショートホールでグリーンを外したのが痛かったな」  光男がホロスコープに映した私のスコアを見て、気の毒そうに言った。  最初のホールこそ失敗したが、二番ホールから持ち直し、六番で光男とタイスコアになった。七番でグリーンにオンしなかったことで妙に力が入り、続く寄せの一打もグリーンオーバーし、ダブルボギーになってしまった。 「本当に、いつもの俺のようだ」  今日の冬樹はまだ大叩きしていない。うまく平常心を保って無難なスコアを続けている。こんな調子では久しぶりに冬樹に負けそうだ。  後半は冷静になって巻き返さなくては……  生きていると実感できるのは、日常から離れてこうしてゲームをしているときだけだ。  この瞬間を有意義に過ごそうと気を引き締めて、手元の味のしないドリンクを飲み干した。
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