1001号室のユキムラさん

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1001号室のユキムラさん

   今日も真夏日和(まなつびより)になりそうだ。  24時間体制で管理人が常駐するこのマンションで、僕は早朝からの勤務。  登りたての太陽はもう肌をチリチリさせてやる気満々だ。  マンション周辺の掃き掃除を終え、管理人に戻り冷えた麦茶を飲んだ。それからエントランスホールへと出る。  (つえ)をついた老人が飾ってある絵を眺めていた。  ーー珍しいな。  そのご老人は1001号室のユキムラさんという方で、奥様と愛犬二匹と暮らしている。  数年前に足を悪くしてからは滅多に見なくなった。  お子さんやお孫さんは度々訪れている様子で、10階の掃除の際、玄関のドアが開いた拍子に元気そうなお声は聞こえていたので安心はしていたのだが。 「お早うございます」  声をかけるとユキムラさんは振り返った。 「クソみたいな絵だ!!」 「は?」 「この絵だ!!観るに耐えん!!」  そう言い残してユキムラさんはエレベーターに乗り、去って行った。  会話したのは久々だったが、とても温厚な人だったはずなのに……。ショックだった。  それからというもの、早朝にエントランスホールをうろつくユキムラさんを目撃したが情けないことに僕は隠れてしまうようになった。
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