巣から落とされる者

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巣から落とされる者

雨ばかりが降るこの季節。 俺がコロニーを出てから7回目。 雨は嫌いだ… 雨が降ると床を拭かなくてはいけないから。 ビチャビチャドロドロの足で食料を運んでくるβ達。 その掃除をしなければならないから。 「お、はじき者の落ちこぼれがいるぞ」 そう言ってβ達は俺を殴り蹴り飛ばした。 「無駄飯食らいのαなんか生きてるだけ無駄だ!」 「やめて…やめてくだ…さい…」 羽根のない俺は逃げられず、虐められ続けた。 頑張っても絶対にΩと出逢えるはずはないって分かってるのに。 俺はコロニーの雑用をし続けた。 そして…ある日、初めてΩを見た。 「あぁ…」 なんて、美しいんだろう… 美しいΩは俺を見ると悲鳴を上げた。 「なんて醜いの! こんな奴、ここから追い出して!」 ヒステリックにΩは叫ぶと周りのαは俺を抱えて外に追い出した。 「さっさと消えろ!」 「……」 外は土砂降り。 こんな中、出ていったら…死んでしまう。 「お願いです!なんでもしますから! 死んでしまいます!ここにいさせてください!」 初めて大きな声を出して喉が痛かった。 顔も手も蹴られながら、コロニーの入口にしがみついていた。 「…おい、コイツも捨てろ」 そう言って奥からαが持ってきたのはピィピィと音のする包み。 「?!」 ぶんっと、崖の上に建つコロニーから投げられたそれを俺は何故か無視出来ずに…入口から手を離して、自分が落下するのも関わらずに空中で捕まえた。 「!!」 それは赤子だった。 とても柔らかい…俺は自分の体を下にして、その子を上にしながら落下した。 ドンッ!! 「ぐ、ぁ…」 体の硬い俺は地面に叩きつけられたが、少し痛いだけで何ともなかった。 「…坊やは?」
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