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二十三時頃、やっとの思いで帰宅した。
いつもこうだ。毎日こうだ。
顧客の、上司の、自分を非難する声が頭に響いて止まない。それに反論も、今やまともな反応さえ出来ずにいる。
北村は、いわゆる「ブラック企業」に勤める社会人一年目の若い男だ。えげつない量の仕事を押し付けられ、毎日毎日外回り。オフィスに帰る電車の中で報告書を書き、帰ったら上司にしこたま叱られる。
毎日この繰り返し。
休日出勤、残業、当たり前。もうそれに抗う気力もない。
コロナ渦だというのにテレワークのテの字もなく、未だに取引先との接待で遅くまで飲む。そこまで酒には強くないのだが、一気飲みをさせられた経験も数えきれない。
一体なんのために生きているのだろう?
ハイスピードで脳内を駆け巡る、二度としたくない屈辱的な思い出たち。
その中に自分の感情が挟み込まれなくなって久しい。
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