『お出迎え』のしつけ方を教えて下さい

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(はな)。熱が出てる」 真夜中。額にあてられた手の感触で目覚めると、体が熱く息も荒くなっている事に気がついた。 「あんなに濡れて帰ってくる神経が分からない。どこかで止むの待つか傘買えよ」 「ごめん…」 「謝られても困る」 こんな時でも、冷たい態度。 「ひとりで寂しがってないかなぁって、思ったから…」 ひとり暮らしが寂しくて買った、恋人。 突然知らない場所で起こされた彼も、同じ様にひとりぼっちな気持ちを抱えていないだろうか、慣れない所で不安になっていないだろうか、なんて考え始めてしまったら…待つ時間も傘を買う時間も勿体なくて足が止まらなかった。 「それ、受け取ってくれない?」 「なにこれ」 ベッドの側に置いておいた、抱えて持って帰ってきた袋だ。 「誕生祝いに。今着てる服しか持ってないでしょう?だからパジャマにしてみた。濡れてたらごめんね」 「ふーん」 ワンルームの部屋。 態度は冷たいけど、体調の変化に気がついて声をかけてくれたんだ。弱った時に家に誰かが居てくれる。それだけで心細くなくていいなぁと彼の存在に感謝していると、瞼の重みに逆らえなくなってきた。 「このまま寝てたら大丈夫だと思うから気にしないで…おやすみ…」 小さく聞こえたため息には、距離があった。
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