『お手』から始まる恋もある

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「窮屈そうだったけど、体は痛くない?」 「…他に聞きたい事ないの?」 「充電方法は何?あと、エネルギーが減ったらどうなるのか聞かせてくれる?」 「やだ」 さてはとんでもない方法か。 例えば足を舐めるとか。無いとは言い切れない。きっとそうだ、特殊だから言えないんだ。 彼らは人とは違い睡眠や食事では回復せず、ケーブルも差し込み口だって存在していないから『充電』という言葉は厳密には正しくない。昔からそう言われているから名目上そう呼ばれているだけだ。 方法は個体によって異なっている。 友達と『ほぼ人間の恋人』の3人で話をしていた時。 突然彼氏が歌い始めて止まらなくなってしまい具合でも悪くなったのかと心配していると、エネルギーが少なくなったお知らせなのだと教えてくれた。 すぐに寄り添いながらモバイルで動画を見始めるから、またどうしたのかと不思議に思っていると『一緒に綺麗な景色を眺めるのが充電方法なの』と、ふたり共幸せそうに笑っていた。 そんな様子に憧れて、私も『恋人』を迎えようと決心したんだっけ。 充電には、持ち主が関わっている事が必須。本人が1人で実行しても回復しない。 そしてその方法は本人しか知らない。 「教えたくない」 3日程は必要ないのが一般的みたいだけど、尽きてしまえば待っているのは停()。2度と起動出来なくなる。 さすがに本当に必要になったら教えてくれるよね?足を舐める以外の方法。 「他には?」 「じゃあ明日、デートしてくれる?」 デート(散歩)のお誘いなのに、子犬は酷く不機嫌になった。
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