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上手に『待て』たらご褒美を
相変わらずの冷めた関係が続き、5日目。今のところ恋人と言えそうな雰囲気になったのはあの時だけ。
寝床としているソファで『伏せ』しているような体勢でいる時間が、増えている気がする。さすがにエネルギー残量が心配で声を掛けた。
「もう少ないよね?」
「…別に、いい」
「死んじゃうんだよ?」
「このまま停死した方がいい」
クッションに顔を埋めてしまう。
「どうして?」
「花のしたい事。照れ臭いから叶えてやれない残念な恋人だから。それに…」
捨てられる事に怯えているような不安を表情に見つけ、思わず手を拾った。
「残念な恋人じゃ、ない!」
確かに叶えてくれない事ばっかりだけどでも、あの日の小さな優しさに彼の本質を見た気がしていた。
着てくれないと思っていたパジャマ。いくら私が掴んでいたからって、離れようと思えばできたはず。抱き締める必要もなかったし、私を恋人と思ってくれていないのなら、あんな甘えた声で名前を呼ぶ意味もない。
冷たい手だった。触れた皮膚が貼り付いて剥がれてしまうんじゃないかと思う程冷えた手が、離れようと抵抗するから必死に握り直し続ける。
「離せ」
「どうしてこんなに冷えてるの?体温なんか維持できるでしょう?」
まさか。
「エネルギーが減ったらこうなるの?」
「…まあ、そんな感じ」
「早く充電しないと!方法は?いい加減教えてよ!やっぱり足?」
「足?」
「違うんだね!良かった!」
「…花が冷える事になるから、嫌なんだ」
そっぽ向いて、いじけるような小さい声。
「私が冷える?」
「あの時は熱そうだったしちょうどいいかと思って…つい、勝手に」
熱が出た日!
そういえば額に触れてきた手の冷たさが気持ち良くて真夜中に目が覚めたのに、朝はあたたかかった。
「抱き締めたら充電できる?」
反応はないけど、正解みたい。
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