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____『野崎ちゃ~ん! 飲み行くよ~ん』
「全然似てねー!」
控え室で一人、スマートフォンの動画を観ながらケタケタと笑う花与。
この間のロケのオンエア後、その反響は思っていた以上のものだった。
『あんなにいろんな顔するメグタン初めて見た!』
『性格最高!』
『ファン思い過ぎる』
『今までアイドル興味なかったけど、月岡くんは好きになった』
素を見せた月岡に対する世間の反応は上々だ。
アイドルファンのみならず、様々な年代の視聴者に受け入れられ、その人気を不動のものにした。
『野崎花与ムカつく』
『やっぱ性格最悪』
『メグタンに色目使うな』
『芸能界から消えろ』
ただ、花与に対する反響は散々だった。
『悪女面白い』
『役にピッタリ』
『あのキャラ意外と癖になる』
それでも花与のキャラクターを面白がる者も増えた。
皆、花与のことを散々罵倒したり、ああでもないこうでもないと話し合いながら、結局ドラマや出演番組を観てしまう。
シオンのハマリ役ぶりや、西園寺や小泉の熱量のある演技、猫美の脱力感も相まって、視聴率は右肩上がりだ。
『ふざけんな野崎! 俺の麦茶めんつゆに変えたろ!』
『なんのことですか?』
今度は番宣用のメイキング映像を観る花与。
『衣装汚れちまったじゃねーかよ!』
『ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!』
『おい!』
月岡との関係も徐々に変化した。
敵意は感じるものの、以前より遥かに距離が近くなった。
彼が花与のことをアイドルとして、女性として見ていないことは明らかだった。
花与は憂慮しながらも、曲がりなりにも月岡と心を通わせることができたことに喜びを感じていたのだった。
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