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事前の説明によると、この店の女性店主とスタッフ達は、皆揃って月岡の熱狂的なファンとのことだった。
月岡が入店した途端、彼女達の甲高い声が鳴り響く。
こいつの化けの皮を剥がすにはもってこいのシチュエーションだ。
花与はそうほくそ笑むと、再びシオンを召還させる。
「メグタン! 素敵なお店だねー。なんか、デートで来たみたいっ!」
「いや、……それはどうかな」
顔をひきつらせながらカウンターに座った月岡の隣にピッタリとくっつき、満面の笑みで微笑む花与。
すぐに店内の空気が変わった。
店主は眉間に皺を寄せながら、震えた声でメニューの説明を始める。
その様子に月岡も動揺を隠せない。
「巨大ラーメンですかぁー! 楽しみだね、メグタン」
「お、おう。いや、近いからちょっと」
「えー! いつももっと近いじゃない!」
「何言って!」
予想外に真っ赤になる月岡に圧倒され、花与は一瞬だけ素に戻った。
……ホントに照れんなよ。
心の中で悪態つきつつも、つられて照れてしまう顔を必死に隠した。
「お待たせしました」
二人の前にそれぞれ置かれたラーメン。
通常の3倍ほどの大きさの器。並々注がれた魚介ベースのスープに、特盛の野菜炒め、肉厚なチャーシューが五枚のせられている。
……麺はもう、見えない。
「……すご」
「……すご」
こちらもまた、想定外のボリュームに、再び素に戻りそうになりつつも花与の暴走は止まらなかった。
「美味しそー! いただきまーす! あ、メグタン、はい、あーん!」
チャーシューを箸でつかむと、月岡の口元に近づける。
そんな花与に店主達は絶句した。
もちろん月岡も。
「……おい」
本性暴いてやるよ。
「何?」
そして、……好感度もっと爆上げしてやる。
「……お前いい加減にしろよ!」
今まで表では出したことのない剣幕で、花与を怒鳴りつける月岡に、店内は騒然とした。
まだカメラは回っている。
突然怒り出した月岡に対して、撮影スタッフも店主達も、唖然と黙るしかなかった。
花与は作戦通りとばかりに口角を上げる。
「ふざけんなよ! この前言ったこと忘れたのか!?」
「あー、ああ。あれでしょ。ファンの人達を悲しませたくないから、一切女の子と接触したくないってやつ?」
わざとらしくとぼけたように語る花与に、月岡は真っ赤になりながら叫んだ。
「それを今、言うなー!!」
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