姫と執事の内緒

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良好な関係を築けていたと思っていたエドガーが怪盗だったわけだが、数日前には予告状も届いていた。  ニーナはいつも通り習い事に追われ、踊りや歌、テーブルマナーから自国の歴史まで勉強に勉強を重ねていた。 そう根を詰める必要もないのだが、暇をしているのは時間が勿体ない。  ただそんなニーナを見かねてか教育係が休憩を提案した。 「姫様。 少し休憩にいたしましょうか」 時計を見ると始めてからかなりの時間が経っていた。 「もう二時間も経っていたのね」 「姫様の集中力は本当に素晴らしいものです。 エドガー」 そう呼ぶとドアの前で待機していたエドガーがノックをし、ワゴンカートを引いて入ってきた。 「紅茶と焼き菓子のスコーンを持って参りました」 丁寧な所作で姫の前に並べ始める。 紅茶やお菓子の説明がいつも通りに始まり、それを聞き流しながら紅茶を口に運ぶ。 ―――本当にエドガーは絵に描いたような執事よね。 ―――執事の仕事を淡々とこなしている。 ―――一年前まで世話になっていた執事はとてもフランクな方だったわ。 ―――執事というより友達の感覚に近かったかしら。 ―――だけどそれに比べてエドガーは・・・。 エドガーのことをチラリと横目で見る。 ―――私との間に壁があるように感じるのよね。 ―――自分のことを一切話さないし、本当に不思議な人。 眺めているとエドガーと目が合う。 「姫様? どこか不調でも?」 「あぁ、いえ。 何でもないわ。 それよりエドガー、外の空気が吸いたいの。 窓を開けてくださる?」 「かしこまりました」 エドガーが窓際へ行くのを見送りながらスコーンを口にする。 すると部屋の電話が鳴った。 ―――こんな勉強時間中に電話? ―――珍しいこともあるものね。 ―――何か急用かしら? 教育係が急いで電話を取り、その表情が変化したのを見てニーナも焦燥を感じた。 「はい、もしもし。 はい、はい・・・。 えぇ!? 分かりました、今すぐに向かいます!」 教育係の慌てた声にエドガーと目を合わせる。 「一体どうなさいましたの?」 「分かりません。 ただ緊急会議を開くとのことなので、少し席を外します。 エドガー、姫様を頼んだよ」 「かしこまりました」 恭しく礼をし、教育係は去っていった。 「何か不穏な雰囲気ね。 エドガー、何か知っていらっしゃいます?」 「いえ、僕は何も」 ニーナは椅子に深く腰をかけた。 何かあれば必ず上手く対応してくれると確信していたからだ。 「そう。 まぁ何かあったとしても、エドガーは私を守ってくださるものね?」 「もちろんでございます」 それからエドガーと他愛ない話で盛り上がり、20分程が経ち教育係が戻ってきた。 「何の会議でしたの?」 「姫様、落ち着いて聞いてください。 怪盗から予告状が届いたそうです。 日程は分かりませんが、宝石を盗みに来ると」 「ッ・・・!」 そのような話を聞くのは今回が初めてだった。 「外の強化をしようと現在対策中です。 万が一に備え、姫様もお気を付けください」 「私は大丈夫よ。 執事のエドガーがいるから」 そう言ってエドガーに目配せをする。 「はい。 姫様は僕が責任をもって守らせていただきます」 予告状が届いた時はエドガーが怪盗とは知っているはずもなく、その本人が必ず何とかしてくれると信じていたのだ。
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