第一章 嘘と方便

10/50
前へ
/339ページ
次へ
「お前が何を選ぶのかはお前の人生だから好きにしたら良い。 だが、こういう現実もある職業だってのは、知っておけよ」 先生が何であんな質問をしてきたのかわかった。 いつも俺様なくせに、やはりこういう事があると先生も胸を痛めるのだろう。 その上で私に覚悟を聞いてきたのかと思うと、私にはすぐに答えられなかった。 「帰るか」 私への確認かと思ったら先生が机の上はそのままでパソコンの電源を切った。 「あー腹減った。晩飯まだだろ?どっかで食ってくか?」 私は頷く。既に先生の表情も声もいつも通り。 今までこうやって色々な事を切り替えてきたのだろうか、それこそ近藤先生なんてもっと長い時間をそう過ごしてきたのだろうか。 私は、そんな世界と将来向き合うことが出来るのだろうか。 お腹が減っていたせいか外の寒さに泣きそうだったが、二人でラーメン屋に寄ってお腹が満たされればほっとする。 京都は本当にラーメン屋が多くて、女性一人で行くのは恥ずかしいが先生と色々なお店に行って感想を言い合うのは楽しい。 お店を出て先生にお礼を言うと、私は帰ろうとした。
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1087人が本棚に入れています
本棚に追加