第一章 嘘と方便

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********* 「これ地図です!あと電車の時刻表一覧です!」 麩屋町通法律事務所のイソ弁である一之森先生が書類を鞄に詰め込んでいるところに用紙を差し出せば、こちらも見ずにそれを無造作に丸めてスーツのポケットに詰め込んでいる。 「あと何分?!」 「二分です! そのファイル忘れてます!鞄に入ってませんよ!」 「わかってる!」 「先にエレベーター開けてます!」 京都駅へ向かうのに必要な時間を逆算し、残り時間はあと僅か。 私はエレベーターホールに急ぎ、エレベーターをこの階に止めて1階のボタンを押しておく。 そこに先生が鞄を持って滑り込んできた。 「行ってくる!」 「行ってらっしゃい!」 エレベーターのドアが閉まり、横に出ている表示の階数は減っていく。 ほっとして事務所に入ろうとしたら事務所の電話が鳴り、ディスプレイには先生の携帯との表示。
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