第一章 嘘と方便

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「出雲は、ロースクールコースか?」 「はい」 初めてそういう質問をされたけれど、何かやはり先生の様子がおかしい。 「先生、何かありましたか?戻ってきてパソコンを見てから何か様子が変なので」 先生の曇ったような目が少し開いてそしてその視線がパソコンに向く。 「メーリスにな、同期の葬式の知らせが来てたんだよ」 弁護士は色々グループやらあるらしく、メーリングリストが多数ある。確か先生の同期で作ってあったのもあるからそれだろうか。 それにしても先生と同じくらいの年齢だろうし、急な病気だったのかもしれない。 「自殺、だってさ」 私の考えに気付いたのか、先生が何事も無いように答え思わず驚いた。 「以前裁判所でたまたま会った時、順風満帆みたいなこと言ってたんだけどな。経営が厳しかったか、仕事が辛くなったのか。これで二人目だ、知ってる同業者の自殺は。 ほんと、自殺率の多い職業だよ、弁護士ってのは」 ただ驚いて聞いている私に、先生は軽く笑う。
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