P9

1/1
前へ
/16ページ
次へ

P9

あの 中3のバレンタインの帰りのことは 今でもなんとなく覚えてる。 ずっと莉子が不機嫌だった。 自習を終えて 教室移動をした時も いつもなら 何だかんだと話しかけてくるのに その日は 最後の最後まで 話しかけて来ることはなく 俺なんかしたか? と  ちょっとばかり考えていた。 あげくは 同じグループの たっちゃんには、話しかけるのに 俺とは 目を合わせなかった異常事態に さすがの俺もムッとした。 どんなもんかな・・と 思ったから しょーがないから 裏の手を使うことにした。 授業が終わり 身支度を終えて帰ろうとする莉子を 引き留める最終手段は 『ちょっとまってくださ-ああい♡』 俺と莉子が話すきっかけを作った 2次元アイドルの しずくちゃんの 音声メッセージだった。 俺から待てと言うのも  なんかカッコ悪い。 かと言って  この穏やかでない空気が 次回に続くのもごめんだ。 迷わずスマホを触って しずくちゃん音声を 莉子の背後から流したら 莉子の足が止まった。 「なんでそれ?」 ゆっくり振り返って こっちに向けて むすっとした顔で莉子が言った。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加