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 いつものように駅に降り立ち、店へと向かう。  ほんの二駅離れているだけなのに、この辺りはセンスの良い店が多くて便利だと思う。いつか私もこんな町にお店を開けたらと、夢が膨らむ。  公園に差しかかると、テニスコートが見えてきた。ボールを打ち合う音が響いている。午前中にある年配者向きの軟式テニス教室だ。華やぐ笑い声も聞こえてくる。私は運動が苦手だけれど、あんな風にラリーできたら楽しいだろうなと、通る度に思う。  すると、頭に衝撃が走った。  初めは何が起こったのかわからなかった。 「ごめんなさーい! 痛くなかったー?」 「え?」 「ボールが当たったでしょう?」  声のする方を見ると、フェンスの向こうからフリルのウエアを着た女性が申し訳なさそうに手を合わせている。どうやらテニスボールが飛んできて、私の頭に命中したようだ。 「ボールがそのあたりにないかしら」  見回しても、それらしき物は見当たらない。 「どうやら弾んでどこかにいってしまったみたいです」 「あら、その向こうの植え込みのところかしら。捜して放ってくださらない?」 「あ、はい」  少し面倒なことになったなと思いながらも、植え込みの下をのぞいてみる。    白いボールがちらりと見えた。  私は低い枝の下を半ば這いつくばるようにして手を伸ばす。予想よりも向こうにある。手が届いたと思ったらボールを突いてしまい、また向こうに遠ざけてしまった。 『ふう。ボールと追いかけっこしてる場合じゃないのに』 『まあそう言わずに。ほら、そこにあるよ』  やっとボールをつかみ、もう一度植え込みをくぐって戻る。
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