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4
マスクをポケットにつっこんで顔を上げると、その女性がにらんでいる。
「マスクしなさいって言ってるでしょう!」
「あ、は、はい!」
私は慌てて包装を開けて、マスクをつけた。
女性は私のことを確認すると、やっとお仲間の方に戻っていった。
感染症?
どういうことだろう。
それよりも、私の紙袋はどこに行ったの。
中には、トートバッグやポーチが数個と、無地のブラウスやシャツに刺繍したものが何枚か入っている。
さきほどの植え込みのところをのぞいたり、飛ばされて行きそうなところまで捜してみた。
それでも、無い。
れもんさんには、午前中にお店にうかがうと言ってあるだけで、時間の約束はしていない。それでも、もうそろそろ顔を出さなければいけないだろう。
『どうしよう』
気ばかり焦る。
あんなに頑張って作ったのに。
昨日は徹夜までしたのに。
このまま手ぶらで店に行ったとして、突然無くなったと説明しても、信じてもらえないだろう。
納期に間に合わなかったから、嘘をついていると思われるのがオチだ。
せっかく声をかけてもらえたのに、信用を失ってしまう。
胸の奥が、さああっと冷えていくのがわかった。
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