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誰か、持ち去った人でもいるの?
自分のうかつさを棚に上げて人を疑いたくはないけれど、これだけ捜しても無いのだから、その可能性は高い。
『交番に行こうかな』
そうだ、落とし物で届けられているかもしれない。
この近くの交番はどこだろう。
スマホを取り出して検索してみる。
あれ?
充電のパーセンテージは80%あるのに、検索できない。
変だな。
「あの、すみません。交番はどこでしょうか」
通りすがりの人に訊いてみる。
「このフェンスに沿って行くと、曲がり角にあるから」
「はい。ありがとうございます」
良かった。近くにあるようだ。
私は焦る気持ちでつんのめって小走りになりながら、交番にたどり着いた。
結局、落とし物としては届いていなかった。
「どうしますか? 盗難として被害届を出しますか?」
私には、魂を込めた大事な物だ。
「はい、お願いします」
紙袋の形態や、中身を詳しく説明する。
「あの、作品には私のブランドを刺繍してあるんです。『Miyuri』って入っています。こんな感じです」
私は写真を選択しようと、スマホをスワイプする。
しかし、データ機能がエラーを起こしたのか、画像が映らない。
「え、どうしたんだろう、おかしいな」
仕方がないので、用紙にロゴを書く。
「えっと、では、城内みゆりさん、ご自身の作品の入った紙袋が無くなった。テニスコートの外側ですね」
「はい、そうです。よろしくお願いします」
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