【13】指輪のカタチ

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「お前もなにか飲むか? チューハイもあるけど」 「あーそうですね」 なんか緊張してきちゃったし、少しくらい飲んでおいた方がいいかも。 「俺もビール飲みます!」 「んじゃ、カンパーイ」 捺さんは手慣れた手つきで、冷蔵庫から缶ビールを取り出し片手でそれを開けて俺に渡した。あまりにスピーディな動きでついていけない。 「か、乾杯!」 俺達はキッチンで立ったままお互いの缶を合わせた。それからリビングへ移動しようとした時、俺が足元に置いていたバッグを捺さんが持ち上げた。 「ん? 重いな。またマンガか?」 「あー、はい。今日はたくさん借りちゃって」 「ふーん。勉強熱心だな」 「だから違いますって」 本当はめちゃくちゃ勉強になってるけど。 捺さんはその重いバッグをソファ脇まで運んでくれた。ビールをテーブルに置いて、二人並んで座る。 「お前さ、そいつと仲良すぎじゃねーか?」 「え?」 「腐男子なのは別にいいけど、そもそもゲイなんだろそいつ」 「そう、ですけど。でも本当にただの友達で」 「むこうはそう思ってないかもしれないだろ。そんなやつの家に一人で行くとかさ、警戒心なさすぎないか?」 なんでだろう。 いきなり捺さんが説教モードになってきた。 「警戒って……そんな事言ったら俺、ゲイの友達なんて出来ないじゃないですか」 「そもそも必要ある?」 え、何…… なんかすごく冷たい。 「お、俺だって色々相談できるような相手がほしいですよ。今までは誰かに話したりってできなかったから。だから俺は嬉しいのに、」 「……まぁ、話すだけならいいんだけどさ」 俺は捺さんの隣で黙っていた。 不機嫌で冷たい捺さんの声が俺を苦しくさせる。 「あー、悪い。ごめん、今の無し」 その言葉と同時に捺さんの大きな手の平が俺の頭を包んだ。 「なんて言うか、心配なんだよ。ごめんな」 それでも俺が(うつむ)いたまま黙っていると、肩を寄せられそっと抱きしめられた。 あぁ、捺さんの匂いだ。ほっとする。 俺も腕を回して同じようにぎゅっとした。 「心配はしないで下さい。絶対大丈夫ですから」 「絶対はねーだろ」 「ふふ、大丈夫です。だって二人共ネ……」 ────あ。 「ん? なに?」 「あ、いえ。なんでもない、です」 捺さんに抱きついたまま、俺は顔が上げられなかった。 「なぁ、なんて言おうとした?」 「…………」 回していた腕が解かれ、顔を覗き込まれる。 「って、なに?」 どうしよう。 言っても大丈夫かな。 でも、いやーな予感がするんだよなぁ。
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