回遊のめぐみ

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長沼さんは肩を落としながら、やれやれ、と言葉を続ける。彼女もなかなかに苦労人だなあ、と私は思う。  それでも、長沼さんは楽しそうであった。  瞳に淡い光が灯っている。まるで彼らを慈しむかのような、優しい感情が垣間見えて、私は微笑みながら、本当にねえ、と言った。  「やあ、お二人さん。お揃いで」  「あらあら、小林さんじゃないの。お久しぶり」  低音かつハリのある声で挨拶をしたのは、ご近所の小林さんだった。たまにしか姿を見ないけれど、今日も随分とまた、ふくよかな体型をされている。  「おはようございます。小林さん。最近お見かけしなかったけれど、お加減いかがですか?」    私が尋ねると、小林さんは、もう参ってしまうよ、と照れたように笑った。  「この通り元気さ。ありがとう。うちはもうみんなよく食べるからねえ。すぐこんな体型になってしまう。お恥ずかしい限りです」  そう言って頭を掻きながら、小林さんは言う。  「食べることが好きというのは、とても良いことだと思いますよ」  「ええ。でも、加減は大事よ。小林さん」  私が言うと、肯定しつつ付け加えるように長沼さんが窘めるように告げる。
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