オンラインおばあちゃん

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また無断でいじってる! 最近覚え始めたパソコンを、またおばあちゃんが勝手に触ってる。しかも、電源入れっぱなしだし! 足早に階段を下りたわたしは、おばあちゃんの部屋を少し乱暴にあけ、 「おばあちゃん!またパソコン触ったでしょ!勝手にいじらないでって言ってるでしょ!」 ちょっと声を荒げる。 「梨絵ちゃん、オンライン何とかって言うの面白いね」 まったく反省してる様子がない。 「またゲームしてたの?」 「知らない人と趣味を共有するのって、楽しいね」 「もう、勝手に触んないでよね」 勢いよくおばあちゃんの部屋のドアを閉め、わたしは部屋へ戻った。 どんなゲームしてるんだろう? ちょっと気になってパソコンを開いた。 『ゲームを続けますか?』 モニターに映し出された問いに、“YES”と打った。 一瞬画面が暗くなり、続けてゲーム画面が映し出された。 【鬼ごっこ】 ゲームのタイトルの次に、おばあちゃんそっくりのアバターが現れた。 ルールは単純、一般的な鬼ごっこだ。 わたしは、おばあちゃんを操作しながら鬼から逃げ続けた。目の前に古びた学校が飛び込んできた。 あそこに隠れて……躊躇なく、おばあちゃんを操作して学校へ移動させた。 背後から鬼が迫ってくる。 何処でもいいと思い、目の前のドアを開けた。 中はガランとしていて、何もなかった。 以前は教室として使われていただろう痕跡は黒板だけだった。その黒板も今では斜めに傾いている。 と、ガラガラと音をたてドアが開いた。 鬼だ! 鬼が追いかけてきた。 慌てておばあちゃんを動かし、教室を出た。 長い廊下は所々朽ち果て穴が空いている。 「あっ!」 操作ミスでおばあちゃんが穴に落ちた。 と、同時に階下でドスンと大きな音がした。 「な、何の音?」 階段を足早に下りながらわたしは叫んだ。 母が慌てながら、「おばあちゃんが……」 わたしはおばあちゃんの部屋をそっと覗いた。 おばあちゃんがベッドから落ちた音だった。 おわり
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