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「傷ついてもいいです。桐生さんのこと、好きなんです」
目からは大粒の涙が溢れている。
大抵の女にはここでキスの一つでもくれてやるのだが。しかしそういうわけにも行かず、俺はただ立ち尽くしていた。
暫くして、桧山が口を開いた。
「私、まだ子供ですよね。恋愛対象外ですよね?すみませんでした。呼び出したりして」
「いや……」
涙を拭いて、スッと俺の横を通り過ぎていく。
「でも」
振り向きざまに言葉を続ける。無理に笑っているのは容易に読み取れた。
「すぐには忘れられそうにないので……しばらく、好きでいていいですか?」
笑っていたはずの表情は歪み、両の頬を涙が伝っている。
瞬間、俺は桧山を抱き締めて深い口づけを落としていた。
息が苦しくなったのか、ン……と小さく声が漏れる。
そっと肩を押して身体を離すと、
「ごめんな」
一言だけ残して、その場をあとにした。
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